Translate

2022年8月20日土曜日

最後の訪問

月日が流れるのはほんとうに早いもので……3年半ぶりの更新です。
パンデミック中、ずっと家にいて時間がありそうなものだったのに、意外と日々追われていたようにも感じるのはなぜなんでしょう。

先週、ベンの実家にさようならをするために、ウェールズへ行ってきました。

ベンのお母さんが2014年に亡くなった後、パートナーのクリスがそのままベンの弟ポールと同居していたのですが、数年前にクリスも家を離れることになったため、ポール一人で住むには広すぎて維持するのも大変なこの家を、とうとう売りに出すことになったというわけです。幸いすぐに買い手が見つかり、それから数ヵ月にわたって少しずつ家のものを片付けていき、ついにこのたびお別れとなりました。

ウェールズ南西のPembrokeshireはCoshestonという風光明媚な地で、ゆったりとボートが行き交う湾が目の前に広がる最高のロケーション。庭もちょっとした公園のようだし、おうちも広々としたすてきなフェリーコテージ。初めて訪れた時、その素晴らしい環境と美しすぎる景観に驚き、こんな夢みたいな家があるのにどうしてゴミゴミしたロンドンなんかに住んでるの⁉️ とベンに言ったほどでした。
以来8年にわたって、クリスマス時期を含め毎年2〜3回足を運んでいましたが、いつ行っても心が安らぐ場所であり、いい思い出しかありません。もちろんそれはクリスとポールをはじめ、地元に住むベンの親戚の方々がよくしてくれていたからというのが一番ですが、このすてきなお家自体が持つVibeというか魅力も多分にあったと思います。変な言い方かもしれないけど、まさかそんなすてきな場所が自分の人生に刻まれることになるとは思いもよらなかった、というのが正直な気持ちです。私はこういう場所には、憧れはあるものの、あまり縁がないタイプかなあと漠然と思っていたから。

ベンとポールにとっては生まれ育った実家とのお別れなので、大量の物品の整理とともに、気持ちの整理も大変だったと思います。まあ、この数年間、家を手放すにあたっての実務に追われてそれどころじゃなかったかもしれないし、ここまでくるとポールはもう早く新生活に移行したいという感じでしたが、長い間、実家から離れて暮らしていたベンは、さすがにこの最後の一週間で少し感傷的になっているように見えました。
私もできるだけこの景色を目に焼き付けておかなくちゃと思うのですが、そう思えば思うほど、何をどう記憶、あるいは記録にとどめたらよいのかよくわからなくなって、これまで何度も撮った景色やスポットの写真をまた撮ってみたりとか、隣家で放し飼いされてるブタちゃん2匹(茶色と黒なので、我が家の猫タムタム&ラミーにちなんで勝手にトムトム&ラニーと呼んでいた)におやつ(庭木のりんご)をあげにいったりとか、よく歩いた道をもう一度歩いてみたりしては、何かとりとめのないことをしているような気がするなあ。。。と結局、焦燥感にかられるばかりなのでした。でも思えば人生っていつもこんな感じ。
自宅の猫たちを長々とキャットシッターさんに任せておくのは難しいため、私は3泊しただけでひと足先にロンドンに戻ったですが、できればもう少し長く滞在したかったです。でも最後にLawrennyにあるお気に入りのカフェ、Quaysideに行けたのはうれしかった。このカフェはベンの実家の対岸にあって、目の前の浜辺から目と鼻の先ぐらいの近さに見え、ボートがあれば5分ぐらいで行けるのに、車で行くとぐるっと道を迂回しなければならず、20〜30分かかってしまいます。メニューは素朴で、少々割高ながら、新鮮な地元食材をメインに使っているし、ケーキもおいしい。そして何と言っても水辺に面したテラス席が開放的でとても気持ちよく、昼からビールを飲むには最高です。クラブサンドイッチ(海藻サラダ付き)もすごくおいしかったし、ビクトリアスポンジも巨大なスライスでしたが、とてもおいしかったです(真ん中の写真はポールが注文したプローマンズ・サラダ。一番下は目の前の眺め)。
ベンの従叔母にあたるミッシェルとPembrokeのカフェでランチもしました。彼女はPembrokeにあるカード屋さんで働いているらしく、毎年ベンの誕生日やクリスマスなどにカードを送ってきてくれるのです(もちろんポールや、その他の親戚一同にも同じようにカードを送っていると思います)。私はミッシェルとは、それこそ8年前のベン母のお葬式の時にちらっと挨拶しただけだったと思うので、正直どんな風貌だったか覚えていなかったのですが、もれなくカードを送ってくれるマメさから、なんとなく勝手に人物像をつくり上げていました。が、今回お会いして、思っていたよりずっと気さくでサバサバした感じの人だったので、やっぱり人って見かけによらないよな、なんて改めて思ったりして。私にもすかさず「誕生日いつ?」と聞いてきたので、いやいや、いいですよーって受け流していたのですが、会話の流れでベンが、翌週に迫っている私の誕生日に触れてしまったところ、「てことは、コリン(ベンの叔父)と同じ日ね」とか言うので、これまたびっくり。「親戚中みんなの誕生日覚えてるんですか?すごい……」と言うと「職業病だから」と返された(ちょっと意訳かもですが笑)。

ベンのいとこ一家、カヤックス家も私がいる間に時間をつくってくれて、来春結婚予定のベンのいとこのエミリーの新居にみんなで集まりました。カヤックス家にはかつて4匹の犬がいて、クリスマスにおうちに訪れる楽しみの一つにもなっていたのですが、今やそのうち2匹が他界し、残り2匹のうちの1匹、コスタが現在エミリー宅に住んでいます。初めて会った時はまだ1歳とかだったと思いますが、もはやこの子も7歳ぐらい? 相変わらず元気に走り回っていて、遊ぶの大好き。体もますます大きくなっていたみたい。
ベンのおじいちゃんも、足腰が弱っているので移動する時は家族に支えながらではありますが、気持ちは相変わらずとっても若々しくて、「とりあえずビール」っつって飲んで、ジョークを交えつつ昔の体験談をはじめ、いろんなお話を聞かせてくれるのでした。私にも「日本に帰るときは連れて行ってね」なんて言ったりするお茶目なおじいちゃんですが、亡くなってしまった犬のスクービーがよくおじいちゃんの膝の上に乗っかってくつろいでいたとあって、スクービーが恋しいそうです涙。しかし今回改めてびっくりしたのは、おじいちゃんがめちゃくちゃ絵が上手だったこと! エミリーの新居祝いを何も用意できないから代わりに絵を描いてあげるって言って描いたらしいのですが、これがめっちゃすてきな絵だったのです。
(写り込みが目立ってしまってますが……けっこう大きい絵です)

おじいちゃんはパンデミック中、人との接触を避けるために一人で地階の部屋にこもっていたらしいのですが、その間にもプラモデルをつくったり絵を描いたりしていたようです。歳をとっても一人でこうやって充実した時間を過ごせるのって、本当にすてきだなあと思いました。

というわけで短かったとはいえ、最後の滞在を満喫できたかなと思います。ベンいわく、最終日には、亡きお父さんの友人夫妻や、隣家の人たちも訪れてきてくれて、みんなで写真を撮ったりしたそうです。このへんはふだん雨が多いらしいのですが、天気にも恵まれた一週間だったし、こんなによいお別れをできることもそうそうないんじゃないかなとも思います。

実家がなくなるのって予想以上にインパクトが大きいものです。うちは両親が10年ちょっと前に、私の生まれ育った実家を手放し、新しい土地に引っ越しました。とても環境のいいところなので心からよかったなあと思っているのですが、以来、なぜか私はこの昔の実家の夢を頻繁に見るようになりました。そこまで実家に思い入れがあったとも思えないのに、本当に不思議なものです。家自体は取り壊され、新しい家が建って新しい人々が住んでいるらしいのですが、私の潜在意識の中で、その古い家はまだ生きているようです。家の持つ力、存在感、意義って、思っているよりもずっと大きいのかもしれません。

ひと足先にロンドンに戻ってきたその翌日、早くもミッシェルから私宛てにバースデーカードが届きました笑。また近いうちに行けるといいな、ウェールズ。ひとまず来春のエミリーの結婚式が今からとても楽しみです。
Today's music: Deep Down in Dreams mix 少し前になりますが、Mother TonguesのWaves & Ritualsという企画で手がけたミックス。夢に出てくる古い実家のことを思いながら選曲しました。

2019年3月25日月曜日

初めてのZine Fair

先々週の日曜にDIY Space for Londonで開催されたZine fairに初出店。大盛況で、とっても楽しかった!

このZine fairは、Peckhamにあるちいさな古本とzineのお店「BOOKS」と、Tome Recordsの後にDSFLに入店したカスタマイズ・デジタル刺繍のお店「1831 shop」が共催していて、今回で確か3回目になるかと思います。これまでも客として行ったことはあったのですが、出店するのは今回が初めて。

「BOOKS」はうちからバスで10〜15分のPeckham Rye駅のすぐ近くに1年ちょい前ぐらいにできたちいさな古本屋さんで、周りの友達からも何度か話を聞いたことがあったのですが、これまで一度も足を運んだことがありませんでした。そこで週末に、BOOKSが扱っているような安いペーパーバッグの古本に目がないベンと一緒に行ってみたところ、うわーなんで今まで来なかったんだろう、と思うような、すごく好きなタイプのお店で、ベンも私もすぐファンになりました。店主のピーターは他に本業の仕事をしながらこの本屋さんをやっているんだそうで、いやー情熱がないとできないですよねほんと。

看板からすべて手作り。古本とZineが所狭しと積まれています。
コンドームとタンポンを無料配布しているあたりもナイス。
ところで実はBOOKSのインスタの写真にときどき登場していた猫が、ビジュアル系? KISS? パンダ? とでもいうような、ものすごくユニークな顔つきをしていて一目で魅せられてしまいまして、ちょうど新作の小さなねこブローチを作っていたところだったので、この猫をモデルにしたブローチも作ってみました。ピーターにあげたところとても気に入ってくれて、Zine Fairでも販売することに。しかしこの猫(ルーシーという名前だそうです)、てっきりBOOKSの猫だと思っていたのですが、実は裏にあるレストランの猫とのことで、姿を見せる時はいつも夕方にひょっこり現れて、積まれた本の上をよじ登ったり、歩いたりしてるんだとか。私がお店を訪れたのもちょうど夕方ごろだったので、会えないかな〜❤︎と思っていたのですが、残念ながらこの日は姿を見せませんでした。

右上のパンダみたいな顔しているのがルーシー。本当にこんな顔してるんですよ!
ピーターがSNSでもシェアしてくれてかなり好評だったので、
たくさん作るぞー!と思っていたのですが、あれもこれもで
アップアップになってしまい、結局この写真の猫たち+3、4個ぐらいしか
作れませんでした。ハンドメイドは時間がかかるので仕方ないですね。
肝心のZineについては、1ヶ月前の出店申し込みの時点では前回のブログでも触れた「ねこのいる風景 Cats I Have Known」しかZineとして販売できるものがなかったのですが、ギリギリ開催日の2日前にどうにかもう一作、仕上げました。この新しいZine「NEKORAMA(vol.1)」では、ねこ関連の小説やマンガの簡単なレビュー、ねこポエム、ねこコミックなどもフィーチャーしているほか、おなじみの「Cats I Have Known」のページもあります。日英バイリンガル版だと時間も紙面スペースも食うので、このZineは英語オンリーです。といってもやっぱりテキスト作成には時間がかかりましたが、ベンにいちおう、ざっと文法の間違いなどもチェックしてもらったので、まあだいたいは大丈夫かと。。。こちらシリーズ化を目論んでまして、また次の機会を目指してvol.2を作成する予定でおります。

さて、待ちに待ったフェア当日。オープンの12時少し前に現地に着くと、出店者たちの3分の2ぐらいがすでに準備に取り掛かっていました。あいているテーブルどこでもOKというので、今回のイベントで唯一、ピーターの他に顔見知っていたホリーの横があいていたので、そこに座らせてもらいました。ホリーは以前、PAMsで一緒にライブをしたことがあるThe Potentialsというバンドをかつてやっていたのですが、Zinesterとしての経歴が長く、英国各地のZine fairに出店しているうえ、 Tate Modernで行われたZineの企画展示などに関わったり、ワークショップで教えたりなど幅広く活躍していて、Zineの世界では有名人です。しかも近々、アジアのZineアーカイブのイベントか何かで香港に出張するんだとか。すごい!

ともあれ、久々に会えてうれしかったし、Zine fairデビューの私としては、お隣が友達というのはとても心強いのでした。ちなみに反対側のお隣に座った初対面のコートニーもものすごく面白い人で、とても楽しかったです。Bムービー、サメ映画、世界のモンスターなど、いろんなカテゴリーのZineをたくさん作っていて、しかも基本的に無料配布(できる人は寄付してね❤︎というスタンス)という太っ腹さ。今回自分でZineを作って、時間や費用がどれだけかかるかというのを身をもって知ったこともあり、感心すると同時に応援したくなりました。

そうこうしているうちにあっという間にオープン時間となり、すでにお客さんが少なからず入ってきたと思ったら、その後も客足は途切れることなく、一日中とても賑わっていました。写真を撮るのをすっかり忘れてしまったのですが、オープン直後にインスタでのプロモーション用に数秒間の動画を撮ったので、とりあえず雰囲気だけ。



正直な話、私は基本的にこういうFairでコミュニケーションを取るのが下手で、客として行っても気になるお店以外はじっくり見ないことが多いのですが、今回、売り手として参加してみて、買う買わないはさておき、足を止めてくれた人たちが気軽に話しかけてきてくれたり、Zineを手に取って見てくれたりするのがうれしかったし楽しかったので、私も次回、客として訪れる時はもっと積極的にいろいろ見て回ろうと思いました。特に「Cats I Have Known」をパラパラと見て「あ! 私この猫知ってる!」という人が何人かいて、話が広がったのも面白かったです。

夕方からはベンも応援に(というかおやつを持って)来てくれたので、しばしお店をお願いしてぐるっとひと回りしてみたわけですが、みんなそれぞれに自分の追求するテーマをZineにしていて興味津々でした。また、DIY Spaceの当日のボランティアの人たちがヴィーガンの料理とケーキ、ビスケットなどを作ってきてくれていて(ヴィーガンオレオのビスケットすごく美味しかった)これも基本、寄付ベースで提供してくれていたのも非常にありがたかったです。

そんなこんなで、クローズ時間の18時まで本当にあっという間でした。私の拙いZineも売れるかなあと正直心配でしたが、ありがたいことに買ってくださる方々がいて、mix tapeもボチボチ売れ、おかげさまで今回の売上とEtsy shopでの売上を足してCelia Hammond Animal Trustに50ポンド寄付することができました〜。




また今回Zine Fairに参加したことで、他のZinesterの方々とコミュニケーションできたのも本当に楽しかったし、新しい世界に足を踏み入れた感が大きかった経験でした。Zine世界ならではのZine交換も初体験できてワクワクしたし、次の機会が今から楽しみです。ブローチや缶バッジが好評だったのもうれしかった。マイペースではありますが、これからまたボチボチ作って、マーケットに出店したりする機会を見つけていけたらいいなあと思っています。とりあえずZine2種はEtsyショップ、TubbingRummyでも販売していますが、先述のBOOKSにも置いてもらっていますので、お近くにお住まいの方はぜひ足を運んでみてください。
この日の収穫:購入したり交換したりしたZineの数々

●BOOKS:http://books-peckham.com/  ※不定期営業のため、オープン時間についてはインスタをチェックしてください。http://books-peckham.com/
●TubbingRummy:https://www.etsy.com/uk/shop/TubbingRummy

2019年2月10日日曜日

ひきこもりの2月、近況。

私にとって2月はいつも一年で一番地味な月です。まず寒くて天気が悪い日が多いので、いつにも増して家にこもりがちになり、大してお腹すいてないのに寒いのを紛らわせるかのごとくつい食べてしまう。末端冷え性の症状が悪化、肌も全身めちゃめちゃ乾燥して体調イマイチ。。。などなど、マイナーに気分がダウンしがち。さらにクリスマスから年始にかけて散財した反動というか反省で財布のヒモも固くなりがちで、なんかこう、全体的に縮こまってる感じっていうか。

今年は、去年の夏から始めた夕方のストレッチとジョギング(といっても平日の夕方できる時に限り、一日ほんの15分程度のランですが、頑張りすぎるとイヤになっちゃうので、とにかく少しでも持続することを目標にやっとります)の効果でほーんのちょびーーっとだけ例年よりマシな気がしますが、どうなんだろ。気のせいかなあ。

と、そんな2月に入ってウダウダしてばっかりじゃダメになる〜と一念発起 、今週ついにEtsyにクラフトショップ「TubbingRummy」をオープンしました(リンクはこちら)。以前よりバンドのライブとかDIY系のマーケットで時々売っていた猫ブローチやバッジなどのほか、ロンドン情報コミュニティサイト「あぶそる〜とロンドン」の猫コラム「Cool for Cats」のシリーズをもとにしたzineなども販売しています。これらの一部はチャリティ目的で、売上はおなじみ地元のキャットレスキュー、Celia Hammond Animal Trustに寄付します。

DIYクラフターのオンラインショップなぞはDIYバンドと同じで、やっぱりギグをやらないとなかなか存在を知ってもらえないので、今年はローカルエリアを中心にクラフトマーケットなどにも参加できたらいいなと思ってまして、いろいろリサーチ中です。

クラフトといえば、実は去年からもう一つハマっているのが、フラワーレジン・ジュエリーづくり。昔から樹脂モノって好きで、特に樹脂に閉じ込められたお花のジュエリーやペーパーウエイト、あとスノードームなんかにもよく魅せられてたんですが、去年、ウェールズやロンドンで散歩中に摘んだ花で何かできないかなあと考えていて、そうだ、昔から好きだった樹脂を使ったジュエリーを作ってみようと思い立ったというわけです。で、やり出したら、これがいやー奥深くてハマるハマる。肝心の花を押し花にしてレジンで閉じ込めるまでのプロセスもそうですが、レジン完成後にジュエリーとして仕上げるまでの金具使いも、ちょっとした差で完成度が全然違ってくるので、延々と試行錯誤しているような感じです。でもめっちゃ楽しい。これもそう遠くないうちにマーケットとかで販売できたらいいなあと思ってます。



本物の花びらを使ったネックレス。ラミーも興味津々⁉︎
それからそう、最近このブログもちっとも更新せずで全然触れていなかったバンド活動について。今までやっていたもろもろのバンドが、メンバーの帰国やら海外移住やら出産やら何やらでこのところ活動休止状態、ペースダウン気味なのですが、そんな中、現在もかろうじてアクティブなのがStanfieldというSludge/doom/punk/metalバンドです。

StanfieldはDIYスペース周辺で結成されたバンド。もともとSludgeって何? ってぐらい、そのあたりの音楽をよく知らなかった私ですが、ボーカルに誘われ、せっかくなので試してみて、加入することになりました。基本的にギターのTommyが曲(歌詞を含む)を書いていますが、各パートでそれぞれ自分なりにアレンジしてみんなで仕上げている感じです。初ライブからすでに2年ほど経ちますが、こちらもメンバーの都合やら何やらでかなりスローペースな活動で、まだこのbandcampにアップしているデモテープの4曲しか完成していないという。。。でもおかげさまで時々ライブに誘ってもらったりして、去年はDecolonise Festにも出演させてもらったし、Blackened Death Records企画のWOMAN (Worldwide Organization of Metalheads Against Nazis)Ⅱ というコンピレーションに曲を提供したり(売上を国境なき医師団に寄付するという目的で制作されたコンピなのですが、なんとリリース数日で£1,200の売上を達成したという、素晴らしい企画です。こちらからコンピを言い値で購入・DLできます)いろいろ興味深いプロジェクトやイベントに参加させてもらっています。

以上、とりあえずの近況でした。今年はもう少し、ちょっとずつでも頻繁にアップデートしていきたいと思ってますので(いやいつもそう思ってるんだけど、なかなかできないのは何故なのか。 いや今年こそはほんとに)、懲りずにどうぞよろしくお願いします。

2018年11月15日木曜日

英国バスルーム改装事情

なぜか日々、追われているような気分でビュンビュン過ぎてゆき、あっという間にもう11月半ば。何度かブログを書こうと、書きたいこともちょこちょこあって、書こうとしたのですが、なぜかこれも果たせず。いったい私は何にそんなに追われてるんだろうと思うんだけど、なんなんだろ。仕事のせいかな。多分そうだな。でもそれだけじゃないんだよな。人生に追われてる感じがしてならん。

何はともあれ日本に帰国した5月から、夏をすっ飛ばして秋、それも晩秋になってしまいましたが、とりあえず最近の出来事から振り返ってみることにします。

その最近の出来事とは、自宅のバスルーム全面改装です。

現在住んでいるフラットは、いわゆるセミデタッチのタイプで、私たちも含めて全4世帯が入居しています。英国の住居は、ストリートから見ると同じ造りの家がずらっと立ち並んでいるように見えますが、ドアの向こうはかなり違う構造になっていることがよくあります。壁を隔てたうちの隣の家も、少し前までは中にたくさん部屋があって学生っぽい人たちが住んでいたようでしたが、ある時、突然住人を全員追い出して改装工事を始め(英国ではこのようにオーナーの意思決定次第で突然フラットを追い出されることがよくあります)、一年がかりの工事を経て、おサレな感じのフラットに様変わりしました。現在はおそらく私たちのフラットと同じような構造(34世帯が入居)だと思います。このように、外枠はそのままで(といってももちろん外装のメンテナンスは多少しますが)内部を改造するというのはよくあるパターンのようです。

私たちが住むフラットの建物も古い(1890年ぐらいの建物らしい)のですが、中に入っている4世帯の住居はそれぞれ個別に改装されており、造りも設備も異なります。めちゃめちゃ寒かった昨年冬になぜか我が家だけ水道管が凍って、数日間シャワーもトイレも使えなくなった際に、1階のフラットAにバスルームを借りるためお邪魔したのですが、うなぎの寝床のような構造で、コンパクトなうちのフラットとは全然違うし、バスルームもとても広く素敵な造りで羨ましい限りでした。うちと同じく2階にあるフラットCは外からちらっと覗き見したことしかないのですが、以前のオーナーが建築家だったこともあり、広々としていてアーティスティックな造りになっている模様。フラットDは半地下で、おそらく4世帯の中では最小スペースかと思いますが、代わりに裏庭が付いています。うち(フラットB)はおそらくフラットDよりは広さがありますが、裏庭はなし。裏庭がないのはうちだけなので、夏場はちょっと残念な気分になります。うちも庭があったら、昼間から庭でビール飲んだり、バーベキューしたりできるのになあ。

ベンいわく、我が家は以前の住人がおそらく90年代〜2000年前後ぐらいに少々改築しているとのことですが、造りがアバウトな箇所がところどころに見られます。また、どのフラットでもそうですが、窓枠を定期的に取り替えたり塗装し直したりしないと木が朽ちてきてしまうので、うちもこの夏にまず少々ヤバいことになっていたリビングルームの窓枠を業者に頼んで差し替えてもらい、全体を塗り直してもらいました。全体的に古いのでパッと見ではあまり気づかない部分だったりしますが、放っておくと腐って大変なことになってしまうらしいので、早いうちにメンテした方がいいらしいのです。

そして肝心のバスルームですが、トイレとバスが一体になっていて狭いにもかかわらず、無駄な部分が多い。壁に備え付けられたボックス棚や、トイレのシスターン(タンク)を覆っているカバーにチープなベニヤ素材が使われていて、これがまたカビやすい。タイルの溝もしつこいカビで黒くなっているうえ、壁や天井にヒビが入っていたり、ハゲてきたりしている。そして何よりも、小さい木枠の窓が、朽ち果ててきていてひどい状態になっている、といった具合でした。

特にこのボロボロに朽ちた窓枠、ベンが最初に入居した2011年の時点ではさほど問題はなかったはずとのことですが、私自身は2013年に初めて住んで以来、もうずっとボロかったような記憶しかありません。しかし実は2年半前に猫を飼い始めてから、バスルームに猫を入れないようにするためにドアを完全に締め切っているので、風通しがますます悪くなって湿気がこもりやすく、カビも発生しやすくなってしまったという事実があります。朽ち果てた窓枠は、その結果としての姿でもあるのでした。

そんなわけで満を持してこの秋、バスルーム全面改装プロジェクトにいよいよ着手することになったのです。

といってももちろん私たちが自分で工事できるわけではないので、まずは業者探し。オンラインで見つけて何人かに見積もりに来てもらいましたが、最終的にフラットDに住むザビアからのクチコミで聞いたラスランというビルダー(建築屋)さんにお願いすることにしました。クチコミの安心感もありましたが、とってもフレンドリーで感じがよく、頼もしい雰囲気だったのと、実はフラットCのバスルームも手がけていたことが判明したのも決め手でした。ちなみにこちらでビルダーやプラマー(配管工)といえば、まずポーランド人というイメージです。イギリス人よりも低賃金でよく働くから需要が多いのでしょう。ラスランはポーランド人ではないようでしたが、東欧出身であることは確かでした。

一番ひどい窓部分は窓専門の業者に頼まなくてはならなかったため、ここだけ先に別業者によって改装が行われました。その時はコックニー訛りの大柄なイギリス人が二人やって来て、ずーっと大声で世間話や身の上話をしながら作業していましたが、工事時間は半日ぐらいで、あんなにボロかった窓が見違えるほどキレイになり、換気も随分よくなって感動。全体の改装がますます待ち遠しくなるばかりでした。


窓だけ改装済みで、その他は工事前のバスルームの一部。
(ボロボロの窓枠を撮っておけばよかった!)
写真だとわかりにくいかもですが、壁のところどころがひび割れ、剥げかかっています
そしてその全体の改装は9月の最終週から2週間の予定で工事が入ることになったのですが、問題は、工事期間中トイレはかろうじてOKだけどシャワーが一切使えなくなるということでした。こんな時、日本だったら銭湯という素晴らしい施設がありますが、こちらはそうはいかず、シャワーを浴びられる場所といえばジムかプールしかありません。なので私は、最寄りのプールに通うしかないかな、久しぶりに泳ぐのもいいし、と思っていたのですが、公共プールのシャワーって共同シャワーであることが多いうえ、あまり清潔とは言えないことが多い。そこで、スイミングにも興味なければ普段からシャワーが長くて意外と潔癖なベンが「うちからなんとか通える範囲で料金もそこそこリーズナブルでシャワーに関する利用者のクチコミがそんなに悪くないジムを見つけた」と言うので、週末に二人で様子を窺いに行くことにしました。

そのジムとはOld Streetにある「Ironmonger Row Baths」という、おそらくジムよりもスパで知られている施設です。1931年に公共浴場として開設された建物を再利用しているため、当時の名残と見られる造りが館内に残っています。現在はBetterというレジャーサービス系の会社が運営していて、会員になるとロンドン市内に数カ所ある同様の系列施設が使い放題になります。
 
昔ながらの「Baths」の看板が目印
最初はジムとプールだけのプランでいいかなと思っていたのですが、スパを覗かせてもらったら、ハンマーム(いわゆるトルコ風呂、ターキッシュバス。簡単に言うと蒸し風呂)やサウナ、リラクセーションルームのほか、シャワーも完全個室でボディソープも備わっているし、バスローブやタオル、ビーサンも支給されるとのことで、もうこの際ちょっと料金上乗せしちゃうか〜と、オトナ買いみたいな感じで思い切ってスパ付きプランにしちゃいました(スパといってもジャクジーとかはないです。ハンマーム&サウナがメインです。マッサージなどの施術は別料金であります)。でもこれで正解だったと思います。なぜかというと、プールの後、ロッカールームの共同シャワーだけじゃ寒くてぜんっぜんムリだったからです。その点、ハンマームとサウナにどっぷり浸かって汗をかくとかなりすっきりして体もポカポカに。普段どれだけ体が冷えているのか実感することしきり。ちなみにベンはサウナも好きじゃないので、まともなシャワーとリラクセーションルームでの読書のために追加料金払ってたようなものでした。スパは一日だけの利用も可能のようですが、高くつくので、頻繁に通うなら会員になったほうが断然お得。ただ会員は月単位なので、経済的にもロケーション的(うちから片道で40分ぐらいかかるし、用事がなければ行く場所ではない)にもムリがある私たちは、とりあえず工事開始直前から会員になって1ヶ月で解約するという目論見でした。

こうして工事開始とともに、一日おきに電車に乗ってジムへ通うという、毎日の生活にハリがでるような、しかしめんどくさいような日々が始まりました。ビルダーさんは毎朝8時前には来てしまうので、私たちも普段より早起き。ベンは仕事の後、夕方からしかジムには行けませんが、私は早い時は朝8時半には家を出て仕事の前にひと汗かくという、シティのビジネスマンのようなことをしたり。といっても午前中のプールはご老人が多いんですけどね。

肝心の工事のほうは、ラスランは現場監督に徹していて時々顔を出しに来る程度で、実際の作業は別の人が一人で行っていました(名前を聞いたけど発音が難しくて忘れてしまいました。仮にAさんとします)。中年ベテランビルダーと見られるこのA さん、月〜土の朝8時から4時半ごろまでガッツリ働き、仕事をジャンジャカこなして日々着々と成果を出す素晴らしさなのですが、英語がほとんどわかりません。もう一人、解体作業と塗装を担当する若い男性Bさんも何日か作業しに来て、彼も英語をあまり話せない様子でしたが、何度かやりとりするうちにこなれてきて、問題はありませんでした。

一方Aさんの英語力はうちの父親レベルで、ハローとかグッモーニンとかサンキューなどの簡単な言葉はわかるのですが、朝、ハワユー?と声をかけてもムッツリ無表情で反応なしだし(でも日本でもよく知らない人や初めて会った人に「お元気ですか?」とか「調子どうですか?」とか聞かれたら「は?」という感じになるかと思うので、もしかしたら彼の母国もこういうことは聞かない文化で、何を聞かれているのかよくわからんという感じだったのかもと後で思いました)、例えばこちらが「ちょっと出かけてきます」とか言うと、もうチンプンカンプンです。しかしそんな時のためのグーグル翻訳というわけで、会話が難しい時は彼のケータイを使って筆談です。

でもそうやってやりとりしているうちに、Aさんがモルドバ出身で、コーヒーの好みはブラックで砂糖2杯、そしてボイラーの様子を確認するためにリビングルームに入ってきた際にタムタムとラミーを見かけて「オォ〜XXX!」(母国語で「ねこ!」と言ったのだと思います)と言ってナデナデしようとしたことから、猫好きであることも判明しました笑。

それにしてもAさんもBさんも、おそらくロンドンに住んでいるのではなくて、母国から出稼ぎに来ているのではないかと思いました。ロンドンに住んでいたら、たとえ普段、自国のコミュニティとしかほとんど接しないとしても、もう少し英語ができると思うのです。ラスランは間違いなくロンドン在住だと思いますが、もしかしたら彼らと同郷かもしれません。英語が堪能でオーガナイズ力があり人あたりもいい組長ラスランが、ロンドンでひと旗上げるべく故郷からメンバーを派遣しているような感じでしょうか。何はともあれいい仕事をしてくれたし、同じく海外在住の身としても応援したいですけどね。

あ、それから、こちらでバスルームを改装する際の大きなポイントは、工事は業者に頼めるとしても、マテリアル(バスタブからトイレ、タイル、キャビネットなど何から何まで)はすべて自分たちで揃えなくてはならない、ということです。ある意味、デザイン設計を自分たちでやらなくてはならないので、私たちもまず週末に一度バスルームのショールームに行き、現物を見て料金を比較することから始めたわけですが、これ、結構悩みます。もちろん不明点などは業者に聞けばアドバイスしてくれるし、資材を買い揃えるにあたってお店も紹介してくれたりしますが、例えばどこにどのタイルを使うかの判断とか、壁や床の長さや面積を測ってタイルが何枚必要か計算して注文するのもこちらの仕事です。うちの場合、とにかくシンプルで掃除しやすいのが一番というベンの意向に沿って、最終的にモノトーンのミニマリスティックなデザインとなりましたが、それでもタイルの色や大きさ、ちょっとしたデザインの違いなどで随分イメージも変わると思うと、やはりちょっと慎重になりますよね。

しかもこれらの購入資材が届いたら、工事で各素材が必要になるまで自宅のどこかに置いておかなければならないわけで、仕方なく私の持ち物がすべて置いてあって普段仕事場にしているスペアルームを資材置き場にすることにしました。このスペアルーム、夜間は猫たちの寝場所にもなっているのですが、さすがに割れ物がたくさん積まれたダンボール箱だらけの部屋を猫たちに開放するわけにもいかないので、工事期間中は彼らをリビングルームの外へは出さないようにしました。猫たちも最初はナニゴト⁉️といった感じで落ち着かず、リビングのドアが開くたびに身をかがめて向こうを窺い、隙あらば脱出という構えを見せていましたが、やがて工事の騒音や人の出入りの音などに慣れてきて「ニンゲンたちがまたなんかやり始めたけどしゃーねーなーちょっとがまんしてやるか」てな感じで、あきらめて大人しくしてくれてました。

しかしそんなこんなで室内は日々散らかり放題、夜間はタムタムによる連夜の睡眠妨害、週末問わず毎朝の早起き、シャワーのためのジム通いなど、非日常パターンの連続に加えて、そういう時に限って案の定仕事も忙しかったりで疲れる疲れる。が、一日の終わりに工事の進み具合を見るのが毎日の楽しみではありました。


装飾を全部外してタイルを剥がしたらこんなホラーな有様に

DIYスペース建設の際に防音のための緩衝材を施す
作業をしたことを思い出しました

壁の状態がよくなかったため、急遽全面補強することに
大昔の花柄の壁紙のようなものが出てきた!


タイル貼りが始まってからはあっというまでした。
バスタブ側とトイレ側で微妙に異なるタイルを使用しました

一方リビングルームでは、ちょうどこの日、
窓掃除がやって来て、タムタムが釘付けに
スペアルームのデスクで仕事している時は一度も膝の上に座ったことなんかないのに、
リビングのダイニングで仕事していたらなぜか膝の上に乗っかってきたタムタム
 
グラウティングが済むと、タイルの白さが際立ってぐんと明るくなりました。
シャワーとスクリーンも設置され、
やっと家でシャワーを浴びられるようになった2週間後の週末 

その後、天井やドアの塗装までしてもらって、
すっかりキレイになりました〜

工事はほぼすべて予定どおり順調に進んだのですが、一つだけ問題がありました。 壁に設置する予定だったガラスの棚が、いざ設置する段階になって箱を開けてみたら割れていたのです……。お店のウェブサイトを見ると、配達による破損などの場合は商品到着後48時間以内に報告のない限りは返金不可となっていてダブルショック。すでに10日以上経過していたからです。大量の資材が一気に届いたため、中身をすべて確認しなかったのはこちらのミスですが、それにしてもガックシ。£65ほどドブに捨てたみたいな(泣)。でもこういうことってよくあるんじゃないかと思うんですよね。あの状態でいちいち全部の箱を確認なんてできないよ〜。お店ももう少し時間に余裕持たせてくれてもいいのに。

翌日には工事が完了する予定だったので、これから注文しても契約期間にも間に合わないし、後で自分たちでどうにかするしかないかと思っていたら、親切にもラスランから「来週からまた別のプロジェクトでこの近所で仕事してるから、新しい棚が届いたら言ってくれればサービスで設置しに来てあげるよ」との寛大なオファー。ありがたい〜。しかもバスルームのデザインが具現化した今となっては、棚の設置プランも少々変更したくなり、結局、他のお店から別の棚を購入して設置位置も変更しました。なので結果的にはよかったかもしれん。そうだそうに違いない。

その後、ラスラン組はその近所のプロジェクトで忙しかったようで、棚が設置されるまでそれから数週間待つことになりましたが、約束どおり、空いている時間を縫ってラスラン本人がある日再びやって来て、パパッと設置してくれました。これでバスルーム全面改装100%完了! めでたしめでたし。ハウスウォーミングパーティならず、バスルームウォーミングパーティ(バスタブでシャンパンとかね)でも催したいところですけども、とりあえずはこのクリーンな状態をできるだけ長く持続できるよう、きれいに使っていきたいと思います(いつも週末、ベンがめっちゃ気合い入れて掃除しています。いつもありがとうベン)。

あ、そういえばもう一つ誤算が。さてジムを解約しようとしたら、すでに10月の解約有効日を過ぎていて、11月いっぱいまでは会員料を支払わなければならないことが判明、、、というわけで今月も元を取るべく、精一杯ジム&サウナ通いしています。

2018年5月8日火曜日

ケンティッシュ・ホリデー

早くも5月、もう一年の3分の1がぁあっ、と毎回同じような出だしで申し訳ありませんが、いやー。

今年は冬が長くてずっと寒かった気がしますが、そんな中、急にぱぁっと晴れて気温も上昇、いきなり30℃近くまでいったかと思いきや、またぐんと気温が下がって5月なのに6℃とかでなんと暖房入れたり、かと思いきや、先週末からまた気温が上がって夏日という、なんだか躁鬱な人みたいな天気です。とにかくつい最近まで寒くて気が滅入りっぱなしで体もずっと硬直気味、やる気が起きない……(寒さのせいだけじゃないかもですが)。でも太陽が出て気温が上がっただけで気分も体調も上がったので、やっぱり天気の影響は大きいなあとしみじみ思いました。私は断然暑い気候のほうが好きなので、なぜこんな涼しい国にいるのか!? と時々真剣に思います。一年を通して涼しくてドライなのも過ごしやすいと思う時もありますが、最近はまた、暑いのが恋しい、汗ダラダラかきたい、と思うことのほうが多いような気がします。

さて、つい先日、はや結婚4周年を迎えて、例年のごとく記念旅行に出かけてきたのですが(当ブログはすっかりホリデーブログに成り果てていますが……)、運良くこの旅行中はお天気に恵まれました。3泊4日でまたしてもイギリスの千葉、ケント州に行ってきたのですが、特に最初の2日は見事な晴天、半袖でウロウロできるウレシさったら。純粋な休暇旅行は久しぶりだったので楽しかったです。

ケント州とざっくり言いましたが、今回実際に訪れたのはカンタベリー(Canterbury)とウィスタブル(Whitstable)です。ベンも私も行くのは初めて。カンタベリーというと、日本人の私はチョーサーの『カンタベリー物語』がすぐに思い浮かびますが、私の周りのイギリス人(というかベンとポール)にとっては「トマス・ベケットが暗殺された場所(カンタベリー大聖堂)」というのが真っ先に思い浮かぶことのようです。ウィスタブルはオイスターで有名なシーサイドタウンですね。前から一度行ってみたいなあと思っていた場所でした。ちなみにこのあたりは以前訪れたマーゲイトにも近く、ロンドンから電車で1時間〜1時間半ぐらいなので日帰りも可能な距離です。そこにあえて3泊という贅沢プラン(企画者ベン)。今回はカンタベリーに1泊、ウィスタブルに2泊しました。

■1日目

朝11時すぎにセント・パンクラスを出発、お昼すぎにカンタベリー・ウエスト駅に到着。そこからまずは歩いて10分ほどのB&Bへ。チェックインにはまだ早すぎる時間だったのでフロントでバッグだけ預けられればと思っていたんだけど、オーナーがとても気さくで「まだ完全には部屋が準備できていないけど、入って荷物置いちゃっていいよ」と言ってくれて、口頭で簡単にチェックイン。肝心のお部屋は開放的でバスルームも広いし、隅々まで行き届いててとてもいい感じ♡

というわけで荷物を置いて、さっそくタウンセンターへ向かいました。お腹がすいていたのでとりあえずランチしようということになり、適当に良さげなカフェ「The Refectory」へ。しょっぱいものが食べたいんだけど、ボリューム大のバーガーやサンドイッチはちょっとなぁ、ちょこっとつまみたい程度なんだけどなあ……なんて延々悩んでいるうちにスタッフが注文取りに来てしまい、ああどうしよう早く決めなきゃ、と焦ってなぜかチョコバナナ・パンケーキを注文してしまった。普段あんまりこういうことしないんだけどなあ。なんで「もうちょっと待ってください」って言わなかったのかしら、、、甘いものが食べたかったんじゃないのに何やっとんだ私は! と後悔し始めた頃、こんなのが来てしまいました。
5段重ねとは思ってなかったので、ウワーッどうしよ。
でもバターもメイプルシロップもかかってないので少々物足りない…
バーガーやらスープやらを食している近くの席の人たちを横目に見て「あのぐらいのサイズならイケたかも」なんていつまでも諦めの悪い気持ちを引きずりながら、満たされない気持ちでパンケーキを平らげたのでした。パンケーキ食べたくて注文してたら、もっと味わえただろうに、うぬー。カフェ自体はナチュラル志向のイマドキ風、でもそこまで気張ってないホームメイドな感じでよかったです。食べ物みんな美味しそうでした。

気を取り直して再び散策開始。ウエストゲートを越えてハイストリートへ出ると、天気のいい土曜の午後だけあって混雑気味。古着屋、レコード屋、チャリティショップなど、目に入ってくるおなじみのチェックポイントにちょこちょこ立ち寄りながら、大聖堂のほうに向かいました。30年ほどここに店を構えているという古着屋さんのオーナーの中年女性が「昔はうちみたいな個人商店がいっぱいあったのよ。でも今はみんな飲食店になっちゃった。それとアメリカン・スイーツのお店がなぜかいっぱい」と言っていたんだけど、確かにアメリカン・スイーツのお店がやたら多い。なぜだろう? あまりに多いので、実はコミュニズムのような感じで全体の儲けをみんなでシェアとか、そういうシステムだったりして、なんて冗談交じりにベンと話していたのですが。それにしてもカンタベリーの個人商店(主にレコード屋と古着屋ですけど)のオーナーは、みなさんとてもよく喋る方々でした。個人的にはこれといって目ぼしいお店はなく、チャリティショップも数は結構あるけれど、服飾雑貨系の1軒と古本系の1軒を除いてはランダムな品揃えのところばかりで、買い物にはあまりそそられませんでした。

世界遺産でもある英国国教会の総本山カンタベリー大聖堂は、さすがに壮麗で見事でした。大聖堂についての歴史などは、世界遺産オンラインガイドに詳しく書かれているので、興味がある方はこちらをどうぞ(記事中、ケント州が「ケンタッキー州」になってますが)。入場料が12.50ポンドとややお高めですが、ウェブサイトによれば維持費に一日約1万8000ポンドほどかかるそうなので、寄付金ですね。

正面ゲート
内部はかなりの広さ。ここは入ってすぐのメインホール。
天井から吊られているのは現代アーティストの期間限定の展示

ステンドグラスの美しさにも目を奪われます
とにかく天井が高い。建築についてはよくわからないのですが、建物の内部が
何層にも分かれているようで、広がりと奥行きを感じます。ベンいわく、礼拝者のスピリットが
天に昇っていくようなイメージを喚起させるつくりなんだとか
メインホールの奥に進むと、歌隊席のエリア。その先が司祭席で、一番奥が礼拝堂。
礼拝堂にはロウソクが1本灯っていて、その下にベケットが埋葬されているそう



歴史を感じる身廊も雰囲気があります

ほっと和める感じの裏庭
ひんやりとした空気が漂う地下聖堂は撮影禁止なので写真が撮れませんでしたが、とても雰囲気があり必見です。イベントなどもよく開催されているらしく、その日の夜もこの地下聖堂でピアノのコンサートが開かれる予定で、私たちが訪れた時にちょうどリハーサル中でした。そのエリアは立ち入り禁止だったのですが、ピアノの音が聖堂内に響き渡っていていい感じでした。

そういえばベンが、カンタベリー大聖堂のことを「(ウェールズの)聖デイヴィッド大聖堂を大きくしたような感じ」と言っていたのですが、確かにとてもよく似ています。ホールのつくりとか、天井の高さとか、全体の構造とか。そこで感じる空気さえも。

普通に敷地内を一周したところで、ちょうど閉館時間。細部の細部までじーっくり見たわけではありませんが、それでも1時間ちょっといたでしょうか。外に出ると、すでに涼しくなってきていたので、薄着だった私たちは一度宿に戻ることにしました。途中、宿近くのレコード屋、その名もわかりやすく「Canterbury Rock」に閉店間際に滑り込んで、ざっとレコードをチェック。長髪ヒッピー風のオーナーの見た目が物語るとおり70年代ブリティッシュ・ロックが中心の(というかそれ以外はあまりない)品揃え。ロングリブ、カンタベリー・ロック!
私はこれキングコングだと思ったんですけど、どう思います?
宿に戻ってちょっと休憩した後、上着を持って再び外出。まずは宿の近所で見かけた歴史がありそうなパブ 「The Unicorn」(17世紀の建物とローカル・エールが自慢の、常連が多そうな好みのタイプのパブでした)でビールを一杯やってから、大聖堂近くのカジュアルなイタリアン・レストラン「Posillipo」へ。土曜なので混んでいて、予約していなかった私たちはテラス席へ通されました(ちょっと寒々しいけど上着を着たままならまあ大丈夫だった)。肝心の食事は結構おいしかったんだけど、ガーリックが強めで翌朝まで引っ張ったのが、後々まで胃腸の調子に響くことになろうとは、このとき知る由もなく……。とはいえ、やっとしょっぱいものが食べれたので満足して、その後、再び宿の近くにあった最近流行りのヴィーガン・パブ「Monument」に立ち寄り、締めくくりのエールを飲んで、その日は終了。

そういえば、ウエストゲートの近くに「The Marlowe」というシェイクスピア劇などが催される劇場があるのですが、この劇場はシェイクスピアと同世代で、彼に多大な影響を与えたといわれるカンタベリー出身の劇作家で詩人のクリストファー・マーロウにちなんでその名前が付いています。で、このクリストファー・マーロウという人、去年のクリスマスにBBC2でスペシャル放映されていた「Upstart Crow」(これがめっちゃ面白かった。自宅にテレビがないので全然知らなかったのですが、2016年にシェイクスピア死後400年を記念して企画されたシットコムで、2017年に第2シリーズとこのクリスマス特別企画が放映され、今年もシリーズ3が放映される予定らしい。脚本があの「Young Ones」のベン・エルトンだったのを知って納得)を見ていた時に、キット・マーロウという、このクリストファー・マーロウをモデルにしたキャラクターが出てきて、私は初めてその存在を知ったのですが、かなり興味深い人物なんですね。しかも彼は29歳にして、ロンドンはDeptford(うちの近所)のパブでお勘定の支払いをめぐって喧嘩になり、顔面をナイフで刺されて即死という、衝撃的な最期を迎えています(彼の諜報活動やその他さまざまな謎めいた行動により、この死も陰謀だったというのが定説のようですが)。
マーロウ劇場の前庭に立つクリストファー・マーロウの記念碑

ご覧の通り、没:Deptfordって書いてあります。
それにしてもDeptfordのパブって一体どこだろう、
Birds Nest(私も何度かライブしたことがあるパンクパブ)だったりして笑

The Marloweの前にて。偽物はどれだ!? 

ん?

んん?

んんんんー?
夜は夜で不気味でした

ところで話は脇道にそれますが、私のまわりのコミュニティ(主にDIY音楽シーン)ではジェンダーやLGBT問題への偏見や差別をなくすように、見た目とか生まれつきの性別とは関係なく自分が「He」か「She」か「They」かは自分で決めればよいという考えで、例えばSNSなどのプロフィール欄にその「自分で決めた性別」を書いている人も少なくないのですが、私は最近までこの「性別を自分で決めて公表する」という行為が逆に性のあり方を定義している気がして、正直いまひとつ自分の中で完全に消化できていない部分があったのです。しかもこの自己申請の性別というのは性的指向に限ったことではないわけで、女性として生まれて性的には男性に惹かれるけど自分は「She」じゃなくて 「They」だという人は、何をもって自身を「They」としているのか、とか、あえて自分の性別を示すことはジェンダー問題への配慮の意思表示と捉えればいいのか、とか、いろいろ思ったりしていました。でもこの日の夜、宿でテレビをザッピングしていたらマッチョなアクション系の映画ばかりを放映しているチャンネルを見つけ、そのチャンネルの名前が「Movies4Men」だったのを見て軽い違和感を覚えた瞬間、なにか急にぱっと閃いた気がしました。こういう、些細ではあるけれど型にはまっている決めつけに違和感を覚えることがきっかけでもいいんだろうな、結局は小さな抵抗感の積み重ねなのかもなあ、と。私自身は性別を聞かれたら今のところ「She」と答えていますが、「They」でもいいのかもしれません。

■2日目

朝食をとりに行ったダイニングルームで、他の宿泊客4、5組と遭遇。B&B内はとても静かで夜も物音ひとつしなかったので、私たちしか泊まっていないのかと思っていたけど、実は満室だったのかもです。朝食は3種類から選べ、前夜のうちにオーダーしておくシステム。私はフル・イングリッシュ・ブレックファストを選んだのですが、これがとっても美味しかった! ソーセージとベーコンが今まで食べた中でもトップかも。ベーコンはいつもちょっとしょっぱすぎだり、生臭さが気になったりしがちなので普段あまり好んで食べないのですが、ここで食べたのは地元産のでアンスモークだったせいか、とてもおいしかった。卵も完璧に半熟だったし、言うことなしでした。

しかし昨晩のガーリックとボリュームたっぷりの食事がまだ消化しきれていないうちにフル・ブレックファストを食べてしまったためか、その後の数日間ずっと胃腸の調子が悪かった。。。そんなに死ぬほど食べたつもりはなかったんだけど、基本的に消化器官が弱ってんのよね、トホホ。   

宿をチェックアウト後、まずはカンタベリー城に向かいました。小さいお城っぽかったけど、訪れた街にお城があるとなんとなくいつもチェックしているので、今回も行ってみようということになったわけです。

カンタベリーにはウエスト駅とイースト駅があり、城はイースト駅に近いのですが、宿からだと歩いて20分かそれ以上かかるので、仕方なく荷物は全部持って出ました。イギリスの駅にはコインロッカーはもちろん、荷物預り所もまずないので、こういう時、本当に不便です。 天気がよかったのだけが幸い。しかし城に着くと、なんと落石のため閉まっていた。。。

城の後ろ側の壁から落石しているようでしたが
(フェンスの向こうに石が落ちているのが見えますね)、
人が通る道路に面している側は大丈夫なのか?という心配も
とりあえず正面側から一枚撮っときました


仕方なく諦めて、ベンがチェックしていた古本屋へ向かうことに。道中「Vinylstore Jr」という、比較的新しそうなレコード屋も見つけたので、立ち寄ってみました。旅先のレコード屋訪問はいつも楽しくて好きです。思わぬ一枚に出会えるチャンスというのもありますが、特にインディペンデントなお店の場合、オーナーの趣味というか、辿ってきた音楽経緯がストックに表れているように思え、「この人はこのあたりはよく聴いてたっぽいけど、このへんはあまり興味なかったのかな」なんて想像できたりして面白い笑。

古本屋「Chaucer Bookshop」はヴィンテージ本をキュレートして揃えているような古本屋さんで、すてきなカードなんかも売っていました。ハードカバーの本がメインだったので、基本チープなペーパーバック専門のベンには収穫がなかったようでしたが、いろいろ眺めるだけでも楽しめました。


児童書コーナーにあった一冊。猫人間!? の絵に釘付けになりました
カンタベリーではシンプルで覚えやすい通り名が目につきました 





そしていよいよ、カンタベリー・イースト駅から電車でウィスタブルへ。たった2、3駅なんだけど、乗り換え接続があまりよくないので、30分ほどかかりました。ウィスタブル駅から宿泊先の海辺のホテルまでは歩いて15分ほど。途中、住宅街を抜けていくのですが、すてきなおうちが立ち並ぶ中、珍しく庭を石庭にしている家があり、思わずパチリ。
イギリスの個人住宅では初めて見ました
強い日差しが降り注ぐ中、やっとホテルに到着。天気がよかったのでテラス席でおいしそうにビールを飲んでいる人が多く、フロント周辺とバーエリアも開放的、そして肝心のお部屋も海が見えて快適! 一気にホリデー気分が高まりました、ワーイ。

チェックインして一息ついた後、ひとまずタウンセンターの方へ向かって海沿いを歩いて行くことにしました。ビーチはデヴォンでもよく見たシングルビーチ(砂ではなくて小石のビーチ)ですが、内陸に向かって芝生の丘が形成されているので、ビーチと公園の両方があるような感じで犬は大喜びですね笑。


水平線に見えるムーミンのニョロニョロみたいなのは何かしら? 
ベンは「マンセル要塞(第二次大戦時に作られたイギリスの対空要塞跡)じゃない?」と言ってたけど、
ちょっと形が違うような。洋上発電か何かでしょうか。
そしてビーチの前には「ビーチハット」と呼ばれるロッジがずらーっと並んでいます。英国南東部の海岸によく見られるこのビーチハットは、言ってみれば地元の人たちが個人で所有している海小屋のようなもので、物置として使っている人もいれば、そこでBBQしたり、海風にあたりながら本を読んだり、日光浴したりしている人もいて、みな自分なりの用途で使っているようです。ちょうど海日和だったこの日は、ビーチハットに家族や友人たちで集まって飲み食いしている光景が多く見られました。



海岸沿いにずらーっと並ぶカラフルなビーチハット。サウスイースト・コーストの特徴的な光景のようです
ハーバーまでたどり着くと、多くの人で賑わっていました。さすが晴天の日曜の午後。名物のオイスターやとれたてのシーフードを売っている屋台なども出ていて、そそられます。私は生牡蠣は全然と言っていいほど好きではなく(カキフライは大好きなのですが)日本ではまず食べないし、ベンなんかもってのほかで全く興味なしなのですが、目の前で殻が砕かれ、供されるオイスターやらシュリンプ・ポットやらを見ているうちに、1つぐらい食べてみようかな、という気になってきました。

あっちこっちでこのように牡蠣がさばかれ、多くの店の前に行列ができていました
全く興味なしでそっぽを向いているベンを尻目にオイスターに釘付けになっていると、突然「あれっ!何してんの!?」という声が。振り向くとそこには、メタリカのカバーバンド・メイトでもあるWitching Wavesのマークとエマが! こんなところでロンドンの友達にバッタリ会うなんてビックリでしたが、考えてみたらウィスタブルはロンドンからさほど遠くないのでそんなに不思議じゃないか。どうやら彼らは昨日までツアーでバンを借りていて、一日余ったのでその車を使ってちょっと日帰りで海辺にでも行くか、という話になったとのこと。それにしても旅先で偶然バッタリって、なんか楽しいですよね。
お約束でみんなで一枚
ともあれ、どうしてもビールが飲みたくなったので、目に入った手近なレストラン「Whitstable Oyster Fishery Co.」に入り、テラス席でビールだけ飲めないかと尋ねると、「飲むだけなら2階ね。広々としててとってもいいフロアなのよ」と言われ、テラスで飲みたかったけどまあいいか、と2階に上がると、うわーーーーすごい。言われたとおり、めっちゃ広々とした贅沢な空間、しかも客があまりいない。ソファ席もいくつかあるのに、ほんの数人の客はみんな海を見渡す窓際のカウンター席で飲んでいました。もちろん私たちもあいているカウンター席へ。いい眺めだー! そしてビールがめちゃうまいっ! 勢いづいた私は生牡蠣、いっちゃいました。

ここ最近で一番のビールでした


生牡蠣は1ピース£2.50でした。目の前の海の浅瀬で養殖しているそうです。
とぅるるっと口に滑り込み、なかなかイケたよ(でも後日まわりの友人に「生牡蠣を食べた」と言うと、
誰もが「ウェーッあんなのよく食べるね」という反応だった)

一方ベンはエールとビクトリア・スポンジ笑
    午後のひとときを満喫した後、タウンセンターへ足をのばしてハイストリートを少し歩いてみましたが、そろそろお店も閉まる時間になっていたので、じっくり見るのは翌日に回すことにして、夕飯に予定していたホテル近くのフィッシュ&チップス店まで30分前後の道のりを歩いて行くことにしました。途中、ウィスタブル城の近くを通ったので、午前中にカンタベリー城を見逃したことだし、と、立ち寄ってみました。お城といっても1790年代にピアーソン家という一家が住んでいた邸宅ということらしく、現在はウィスタブル城トラストという財団によって管理され、ウェディングやパーティーなどのイベント会場として公共利用されているようです。お庭がなかなか素敵でした。どうやら日中にフリマか何かが開催されていたようでした。
                                                                                                                                                                    さらにしばらく歩いて、やっとお目当のフィッシュ&チップス店「Ossie's Best Fish and Chips」に着いたと思ったら、なんとレストランは休業中。しかしその横のテイクアウェイ・コーナーは営業中で、行列ができていました。テイクアウェイして目の前のテラス席で食べている人たちもいたので、私たちもそうすることにしました。評判どおり、伝統的なタイプのフィッシュ&チップスでとてもおいしかったです。タラの身も肉厚で、ちょっとハドックに近い歯ごたえでした。
                                                                                                                                                                    食後はホテルに戻って館内のパブで軽く飲みました。ウィスタブル・ベイにてローカルエールのウィスタブル・ベイをタップで飲む。これぞ! というわけで2日目終了。

部屋から見えるサンセットがため息ものの美しさでした

■3日目

前日までの夏日はどこへやら、この日は気温が下がって本来の涼しい気候に逆戻り。天気はそれほど悪くなかったですが、肌寒くてコートが必要でした。

朝起きるとちょっと胃がもたれているような感じ。外食続きなところにフィッシュ&チップスの脂でトドメを刺されたかと思いましたが、それでもお腹は空いている。なのでいやしい私はメニューを見るとなんだか食欲が湧いてきて(しかも朝食無料だし)、ついベネディクト・マフィンを頼んでしまったのですが、やめとけばよかった。。。この日は夜まで胃もたれと格闘するはめになってしまいました。

朝食後はまた20分ほど歩いてタウンセンターへ。インディペンデントなお店が並んでいるけれど、ヴィンテージショップと呼べる店は1、2軒しかなかったし、服飾雑貨系ショップはみなシーサイドによくある感じの中年向けのお店ばかりで、カンタベリー同様、買い物欲はそそられませんでした。それでもローカルなオーガニック製品を扱うカフェやショップ、レコード屋、チャリティショップなどを見て回ること数時間。ウィスタブルにも「Oxford Street Books」という古本屋の良店があり、案の定ベンは時間かけて見ていたわけですが、店内のレイアウトや装飾、品揃えなどからして、以前このブログでも紹介したウェールズの古書街Hay-on-Wyeにあってもおかしくなさそうな、充実した古本屋さんでした。
オイスター&ビネガー味のケント産ポテトチップス。
オイスターの味はしなかったけど、普通にうまかった 
アーティスティックな古本屋の看板



内部はいくつもの小部屋に分かれていて、それぞれの部屋に
本がジャンル分けされていました。地下フロアも広々、充実

道で見かけた昔ながらの看板。オロナミンCの
ホーロー看板とかを思い出すような(そんな古くないかな)
 小腹がすいてきたけれど胃腸の調子がよくない上に記念日ディナーを夜に控えていたこともあって、ガッツリは食べたくない。そんな状況の時、イギリスではいつもほんとに店選びに困ってしまうのですが、そういう時はまあ大抵カフェに入ることになるのが常でして、またしても周辺にあった手頃なカフェ「Revival」に入ってみたわけです。

そこはちょっとDIYスペースのような感じでコミュニティ経営(?)のカフェらしく、内装はポップな60s風、スタッフはとてもフレンドリーだし、レコードを持ち込めばかけてもらえるというすてきなカフェ&アイスクリーム・ショップなのですが、「本日のスープ」がニンジンと生姜のスープだというのでそれを注文したところ、出てきたのはどう考えてもトマトスープ。それもトマトソースのような味の濃いスープ……。なんか思っていたのと全然違ってガッカリ、食もあまり進まず(ベンは結構気に入って私の代わりに食べていた)。というか、最初の一口か二口で「ニンジンの味も生姜の味もしないんですけど」と文句言えばよかったんじゃないかと思って、ベンにそう言うと「あっちの壁に貼ってあったチラシに『安くおいしく料理するレシピとコツ』が書いてあって、『困った時はトマトと玉ねぎを投入すれば大抵どうにかなる』みたいなことが書いてあったから、これもそれに従ってつくってるんじゃない」と言われて驚愕。貧乏学生レシピかい! でもなんか微笑ましくなって文句言う気もすっかり失せました。こんなんばっかりですイギリス生活(笑)。
パステルカラーのポップな店内

ベンが注文したシェイクも果汁たっぷりでおいしかったけど、
シェイクというより、私が毎朝家でブレンダーでつくっている
フルーツジュースみたいな感じかな、という笑
さて、この後、再び海の方へ向かい、今回ベンの「やることリスト」に入っていた、俳優ピーター・クッシングの思い出ロケーション巡りへ。ベンが大好きなピーター・クッシングは生前ウィスタブルに住んでいたそうで、家が残っているほか、お気に入りだったカフェや海辺のビュー・スポットなど、関連の場所がいくつかあるとのこと。ウィスタブル・ミュージアムにピーター・クッシングのセクションもあるということだったので見る予定でいたのですが、残念ながら私たちがいる間はミュージアムが閉まっていて入れませんでした。

まずは彼がよくこのベンチに座って海を見ていたという「クッシング・ビュー」へ。海沿いに適当に歩いて行くだけで、地図なしでも簡単に見つかりました。

自宅だったという家もその先を少し歩いたところにすぐ見つかりました。今は誰が管理しているのかわかりませんが、日常的には使われていないように見えました。ベンいわく、ピーター・クッシングは奥さんに先立たれてからかなり憔悴してしまい、一時は彼をサポートしていたあるファミリーと一緒に暮らしたりもしたそうです。そういう背景を聞いたうえで家を目の前にすると、またいろんな思いがよぎってしまいますね。

おなじみのブルーのプラークが壁にかかっていました
その他、彼がよく行ったカフェレストランは、目の前は通りましたが中には入りませんでした。あ、それとハイストリートにあったウェザースプーン・パブも、このとおりピーター・クッシングにあやかっていました。


ディナーまでまだちょっと時間があったので、海辺を歩いていて見つけたパブ「The Old Neptune」で軽く喉を潤すことにしました。このパブがまたいい感じで、店内に飾ってあったテレグラフ紙の記事によれば、英国ベスト・サマー・パブ(だったかな?)に選ばれていたようで、「特に凝ったアイデアがあるわけではないが、晴れた日にこのパブのテラスでビールを飲むと地上の楽園とはこのことかと思える」みたいなことが書いてありました。外に目をやると、確かにこのパブはまさに「ビーチの上」に立っていて、目の前がどどーーんと海!なので納得でしたが、残念ながらとても外に出てビールを飲みたいと思うような気候ではありませんでした。でも温かみのある店内も居心地がよく、時間が早かったせいか混雑しているというほどではなかったにせよ、ローカル客が途切れることなく訪れていました。後から知りましたが、19世紀初頭から続く歴史あるパブで、地元の人たちには「Neppy」の愛称で知られているそうです。
西陽が差し込む温かみのある店内

この後のディナーを考え、私はハーフのラガーで我慢
 夜7時半を回ったころ、事前に予約していたハイストリートにある創作ビストロ「Samphire Whitstableへ。真夏のような天気で誰もが外に出て遊んだ週末が明けて、寒々しさが戻った月曜ということもあってか、比較的静かな夜のようでした。私は腹具合を考えて前菜はスキップし、メインの白身魚と魚介とカボチャのチャウダーを選び、ベンはハルミチーズを使った前菜と、味噌と発酵チリを使ったハッシュブラウン、パクチョイ添えというアジアンテイストなメインを選びました。チャウダーは私の壊れかかった胃腸にも優しい味で、今回やっと自分に合った正解なメニューを選べたという感じでした笑。ベンが頼んだハッシュブラウンを少し味見させてもらったところ、甘辛味噌が程よくきいていて、これもとてもおいしかったです。
料理の写真は今回撮らなかったのですが、
テーブルのお花がとてもきれいだったので食事前に一枚
お腹に優しい食事だったといえども、まだまだ胃もたれが完全に治ったわけではなかったので、食後に飲むのは控えました。ホテルのパブがまたなかなか居心地よかったので少々残念だったけど、またの機会に!

■4日目

最終日、カンタベリー・ウエストから夕方5時半に出る電車でロンドンに戻る予定だったので、逆算するとウィスタブルにいられるのは3時半ごろまで(実はウィスタブルからロンドンへの直通電車もあるのですが、ベンがちょっと計算違いをしてしまい、カンタベリーに一度戻るという、かなり遠回りのルートで切符を買ってしまっていたのでした笑)。10時にチェックアウトし、荷物をフロントに預けて、そこからバスで15分ほどの小さな海辺の町ハーンベイ(Herne Bay)へ行くことにしました。知らない土地でバスに乗るのって好きです。

さてこのハーンベイ、街としては今回の中で一番好みでした。寂れ具合がとても良い。というか、寂れてるようで寂れていないんだな。数軒あるヴィンテージショップやジャンクショップの質も好み。ちょっとマーゲイトにテイストが近いかも。規模はだいぶ小さいですが。バス停降りて最初に目に入ったアンティーク・エンポリウム「Bay Emporium」の外観だけで「お、これはきた!」という感じでした笑。

このいっぱいいるカートに乗ったわんこたちは一体。。。よく見るとパジャマ姿のカバくんも

後ろ姿がまたなんとも

ヌードドローイングと子羊の組み合わせもなかなかオツ

珍しいカンガルーの親子。。。

片耳でバンザイ


ミニクッション、買おうか迷ったけど結局買いませんでした(猫なら買ったかも)
このほか訪れた何軒かのお店もみな個性があってよかった。特に「Alamode Vintage」というお店が入っている建物はハーンベイで2番目に古いらしく、オーナーのエリィさんが買い取って住居にもしているんだそう。おそらく昔はベーカリーだったのか? 壁にはめ込まれた鉄製のオーブンのようなものが残っているのも味わいがありました。エリィさんがまたとてもフレンドリーな人で、私たちが記念旅行で来ていると言うと、「ハーンベイまで来てくれて本当にありがとう。じゃあ記念のプレゼントとして10%引きにしてあげるわ!」と言ってくれたりもしたので、つい買い物してしまいました(もともとのお値段も非常にリーズナブルなのです)。もう一軒の「Maison Classique Emporium」というお店でも一着購入、今回は古本とレコードと小さいもの以外は買い物していなかったのですが、ハーンベイでいきなり散財してしまいました笑。

Alamode Vintageが入っている、ハーンベイで2番目に古い建物
 レコード屋「B side the C side」ももちろんチェック。けっこう気になる品揃えだったけど、特に今ここで買わなくてもという感じだったし、予算も尽きたので私は買い物しませんでした。

海辺には町のランドマークでもある時計台があり、桟橋も見えました。時計台がある町ってなんとなく好きです。なぜかはわからないけど、いつも時計台がある町は好きになることが多いんですよね。

伊豆あたりを思い出させる風景です



休憩したカフェ「Green Door Deli」も居心地いいし
ケーキもクロワッサンも美味しくてよかったです
そうこうしているうちにあっという間にそろそろバスに乗らないと、という時間。駆け足で回った感じではありましたが楽しかったです。ウィスタブルに行く機会がある方は、ハーンベイまでぜひ足をのばしてみてください、と言いたいですね。

というわけで、バスでまたホテルへ戻り、ホテルから歩いてウィスタブルの駅まで戻り、電車でカンタベリー・イーストまで戻り、カンタベリー・ウエストまで歩いて、そこから電車に乗ってロンドンに戻りました。完全リバース・ルートです笑。それにしても久しぶりで楽しい旅でした。来年はどこへ行こうかなあ。
カンタベリーでもウィスタブルでもとにかく犬ばかり見かけましたが、最後の最後で猫と遭遇

ロンドンへ戻る電車の車窓から。毎年、この時期は菜の花が満開で、いつも旅先で菜の花の絨毯を目にします
■お店情報

<カンタベリー>
The Retro(B&B)
The Refectory(カフェ)
Frocks n Stock (ヴィンテージ、チャリティショップ)
Revivals (古着)
Canterbury Rock(レコード)
The Unicorn(パブ)
Posillipo(イタリア料理)
Monument(ヴィーガン・パブ)
The Chaucer Bookshop(古本)
Vinylstore Jr(レコード)

<ウィスタブル>
The Marine Hotel(ホテル)
The Whitstable Oyster Fishery Co.(シーフード・レストラン&カフェ)
Ossie's Best Fish and Chips (フィッシュ&チップス)
Whitstable Produce Store (カフェ、ローカル食品)
Anchors Aweigh Vintage(ヴィンテージ)
Oxford Street Books(古本)
Revival(60sベジカフェ、アイスクリーム)
The Old Neptune(パブ)
Samphire (創作ビストロ)

<ハーンベイ>
Bay Emporium (アンティーク)
Alamode Vintage(ヴィンテージ・ファッション)
Maison Classique Emporium (ファッション、ヴィンテージ)
B side the C side(レコード)
Green Door Deli (デリカフェ)